開高 健。

氏の名前を知ったのは中学生の頃だったと思う。
いや、高校生だったかな?
友人のお兄ちゃんが週刊か月刊かの「プレイボーイ」の愛読者で、それをこっそり友人と見ていた時に知ったと記憶している。
“やたらと難解な漢字だらけ”という印象だった。

友人のお兄ちゃんは、親に見つからないようにベッドの下に敷き詰めたり、机の引出の奥に隠したりしていたけど。
母親の嗅覚はもっと上を行くので、学校に行っている間にことごとく処分されていた。
しかも。
お互いが何事も無かったように振る舞っている様子であることを友人から聞かされ、笑いに笑った記憶がある。

それからズンッと飛んで、浪人時代。
国語に相当問題があった私は苦肉の策として本を読んだ。
高校卒業まで活字の本を読んだ事が無かったのに。
漫画はキッパリ辞めて、活字を読んだ。
初っ端から長編が読めるはずもなく、先ずは「星新一」から門を叩いた。
一日一冊ペースだった。

星氏の作品を読み終え、次に手を出したのが赤川次郎氏。
これもバンバン読んでいった。
赤川氏の読み物も無くなった。
で、次のターゲットを探す時に手にしたエッセイが開高氏の作品だった。
「白いページ」である。
今まで読んでいた作品に物足りなさを感じていたのに。
氏の文面を突きつけられ、思い上がりだと気付いた。

「ちくしょー!意味がわからん!!」
正直な感想。
私の性格ならば二度と読まないだろうに、気になってしかたなかった。
だから、分かりそうな章だけ拾って読んだ。

・・・これがファンになった契機だな。
漢字の意味を知るに従って、読み返すと面白くなった。
歴史を知るに従って、読み返すようになった。
世の中を知るに従って、氏の全作品を読むようになった。

氏の作品の中で、私が好きなのはエッセイと紀行本。
氏の40歳位から、ズンッと惹かれてしまう。
自分も同じ年になったからだろう。

今も年に一度か二度は読み返す。
読み返すと新しい発見があり、忘れていた事を思い出す。
前にも書いたと思うが。
何度も読みたくなる本はそうそう無いんだから貴重である。
そういう本を見つけている人は幸せだと思う。

氏は釣り師でもあった。
「心はアマチュア、腕はプロ」
これも氏の言葉である。
釣り人には堪らない文言やなぁ・・・。

昨日届いた写真集を見ながら、いっぱい思い出した。
ここでは書き切れないくらい頭の中で言葉が飛んでいる。
どうにかこうにか、飛んでいる言葉を掴まえたら。
こんなふうになった。