男前な話し。

約三週間前のお話し。
1年半ぶりに友人と会った。

「お昼でもどうよ?」
「いいねぇ~」

そんな短い会話で即決。
京都駅で待ち合わせた。

お昼からでも。
アルコールOKな2人なので。

ビアホールを見つけて。
ジョッキーで乾杯した。

先ずはお互いの近況報告。
まぁ~いろいろある。

何杯かビールを追加すると。
会話ももっともっと弾んでくる。

ちょうどそんな時。
抱負の話しになった。

  ◇ ◇ ◇

「ワイはおもしろがることやねん」
「おもしろがって仕事するねん」

「どういうこと?」

「しんどい仕事やから」
「そんなことでも考えんともたん」

「で、なにしてるの?」

「今から来年に向けて」
「あれこれ企画やら遊びを考えてるねん」

「たとえば?」

「新聞を読むための虎の巻とか」
「万年筆で字を書いているとか」

「へぇ~」

「形見の万年筆が使えたんで」
「それで字を書いて楽しんでるわ」

「僕はボールペンやわ」
「万年筆は敷居が高いかな」

「ワイも使うまではそうやったけど」
「慣れると書きやすいねん」

「それおもしろそうやね」
「どこで買うてんの?」

「神戸に専門の店があるねんけど」
「書き手に合わせてペン先を調整してもらえるねん」

「一本、一本か?」

「そう、対面で書き方を見ながらやで」
「今度連れてったろか?」

「今度はいつになるか分からへんし」
「今から行こうや」

「えっ、神戸やで」
「学生時代やったら普通やったやん」

「そやな」
「すっかり勢いが落ちてもうてるわ」

  ◇ ◇ ◇

店に連絡してから。
新快速に乗り込んだ。

電車の中でもまだまだ。
おもろいことでの話題ばかり。

遠いはずの神戸もアッと云う間で。
お店に顔を出した。

店主に友人を紹介し。
さっそく万年筆選びに入った。

何本か万年筆を選び出し。
友人の前へ指し出し。

「書き味を試してみて下さい」

友人は云われるまま。
何本も次々と書いていたが。

「万年筆は初めてなんでよぉ~分かりません」
「店主のお薦めの一本はどれですか?」

リーズナブルな万年筆なら。
プレゼントする気でいたのだが。

ちょいと雲行きが変わったので。
だまったまま様子を見ていた。

そこに店主が一番のお薦め品を。
友人の前に置いてから話した。

「私が思うベストの万年筆です」

友人が書き味を試すやいなや。
開口一番。

「今までと全然書き味が違う」
「これにしますわ!」

どんな万年筆だか知りたいでしょ?

まことに男前の瞬間を見せてもらった。
そのお礼にと友人に違うものをプレゼントした。

男前にはなれないと実感した。