印象深い文章。

先日「ウルトラ・ダラー」を読了した。
その中で印象に残ったフレーズがある。

それは。
外交官という仕事に就く人達への警句であると思われる。

ちょっと書いておきたい。


“・・・外交とはつまるところ公電を書き綴っていくわざなのだ。
たしかに事態が動いているときは、外務大臣にも、直属の上司にすら見せない覚書はある。
だが、そんなときでも、プロの外交官なら、交渉の記録だけは手元に必ず残しておく。
それは、外交を委ねられた者に課せられた責務である。
三十年の後、それらの外交文書は機密の封印が解かれて、外交史家の手に委ねられ、歴史の裁きを受けることとなる。
これは外交官という職業を選んだ者が受けなければならない最後の審判なのだ。

 歴史への畏れを抱いた外交官だけが、組織内の栄達や目先の政治情勢に足をとらわれることなく、筋の通った交渉をやり遂げる。
その志が公電のかたちをとって歴史に刻まれていく。
外交の軌跡を公電という形で記録に残さなくていいなら、後世の批判を恐れることなく、恣意的な交渉に身を委ねればいい。
その果てに国家や国民を裏切る決着を図ることすら可能だろう。
交渉の内実は将来にわたって誰にも知られる心配がないのだからー。だが、そうした行為は歴史への冒涜にほかならない。

=中略=

「外交官とは国家の恥部をあまねく記録に刻みつづけるものをいうー。
こんなことを書いた英国の外交官がいた。
その勇気がやがて国をあるべき針路に向かわせる」・・・”


この作品の内容は最後でつまずいた感があるけど。
ここのフレーズは強烈であった。

外交官の本当の職務を見たような文章だった。