その友人と知り合ったのは。
専門のゼミが一緒になった。
大学の三回生の時からであった。
当初、それほど親しかった訳ではなかったが。
ゼミの飲み会の幹事を買って出たりしていたことに。
いたく感心して。
四回生の卒論時期には。
図書館で席を占めている彼と会うや。
「茶、しばきに行かへん?」
「行こうか」
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学校近くの喫茶店で珈琲をすすりつつ。
「あ~だ、こ~だ」
「あれや、これや」
青春の1ページを飾るような。
それはそれは。
学生然とした生活をしていた。
□
当時はバブルの真っ只中であり。
就職活動も売り手市場であったのに。
彼は地元の公務員をめざし。
血気盛んなご性格を上手に隠しつつ。
みごと、希望通りの職に就くことに相成った。
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その後は賀状の挨拶だけになってしまったが。
それはお互い様であり。
「チャンスがあれば、会おう!」
そんな挨拶文を交わすだけになっていた。
□
しかし。
彼にも順風満帆だけがあった訳ではない。
ある年の賀状の挨拶に。
“仕事を退職しました”
血気盛んさが災いしたのかと連絡してみたら。
「病気になってなぁ。。。」
□
病名を訪ねるも、聞いたことのない病名。
「現代医学では治療方法がないんじゃ」
「これからの治療はどう考えてるの?」
彼は一切の新薬治療を拒否し。
自然治癒を信じて。
何年もの間、自宅療養に入ったのである。
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恐怖、不安、ありとあらゆるものから。
ただただ耐えるのみの彼に。
しょ~もない慰めの言葉など陳腐だった。
本人も承知だった。
□
それからは。
賀状を送る前月の12月にきっと。
電話連絡し。
「まいど、元気にしてるか?」
彼の安否を確認することにした。
それから。
年賀状を書くことにしていた。
□
それが。
仕事にかまけて連絡し忘れた年があった。
すると。
彼から電話がかかってきた。
「今年は電話がないから」
申し訳ないと思った。
□
何年も何年も経ったあるとき。
“自分の目指したい道が見つかった!”
嬉しい挨拶文を読んですぐさま連絡してみると。
「職人になるんじゃ!」
□
年齢的なハンデがあるものの。
弟子入りを懇願した甲斐あって。
師匠から入門を許可された友人は。
職人作業に徹底的に打ち込んだ。
連絡しても。
「とても忙しいんじゃ」
声が溌剌としていた。
それが。
とても嬉しく思った。
□
独り立ちするようになった数年前に。
ゼミ旅行以来、久しぶりに旅行した。
その時に実感したのは。
とても無口になっていたことである。
「茶、しばきに行かへん?」
私が彼に持っていたイメージは。
学生の時のまんまであった。
時間が経ったんだなぁ~~。
それでも。
心に残る旅行のまんまである。
□
その彼が。
最近ブログを始めた。
メールをもらったので。
早速、クリックして読んでみたら。。。
「おもろいこと書いてるやん!」
お電話申し上げ、久しぶりに話したとき。
「忙しいの?」
「全然、暇がないんじゃ」
「そうなの?私は不景気を被っているから。
サッサと店を畳んで、楽しく飲んでくるわ」
「おまえ。。。殺したるぅ。。。」
昔の面影は残っていた。
□
彼の今後の課題は幾つかあるんだけど。
その一つは。
彼に続く後継者を育てることである。
彼の仕事は。
日本でも屈指の超レアな部類である。
だから。
取り組む姿勢。持てる技。考え方等々。
一筋縄で行かないのだから。
何年もかけて。
じっくりと育て上げなければならない。
□
もう一つは。
友人自身が将来引き受けなければならない役職である。
【日本国宝】
それである。
□
私は友人に代わって。
楽しく旅をし、トレッキングをし、釣りをし。
HPに掲載しつつ。
彼のお役に立とうと必死になっている。
□
・・・。
こんな事書くと。
ホンマに殺されるかもしれないなぁ。。。