訪ねてクルクル。

数日前のこと。

会議から帰店後。
帳簿の整理をしていた。

集中したかったので。
ラジオの音を消し。

帳簿をチェックしつつ。
項目を綿密に記載していた。

  ◇ ◇ ◇

すると・・・

扉をガバッと開けて。
大声で挨拶する若者数人がいた。

「何か御用ですか?」
「実は近所の食事の店を宣伝しているんです」

過去にも同じようなのがあったから。
胡散臭いと思いつつ。

「今、立て込んでるんですが」
「ちょっとだけです」

「手短にお願い致します」
「○○のお店のクーポン券を購入してもらえませんか?」

「場所はどこですか?」
「ヨットハーバーに近いお店なんです。
 今なら30%割引ですから」

「すみません、
 立て込んでますから」

お引き取り願った。

  ◇ ◇ ◇

再び机の前で。
帳簿と格闘していると。

「こんにちは」
「どなた様ですか?」

やっと調子に乗ってきた矢先。
またもや違う種族が現れた。

赤毛のアン”時代から飛び出したような。
清楚な出で立ちの宗教関係者であった。

片手にはかなりの冊数の。
怪しげな本を持っていらっしゃる。

「神の使いをご案内しているのですが」
「すみません。
 ちょっと立て込んでいるのです」

また。
お引き取り願った。

  ◇ ◇ ◇

ため息をつきつつ。
またもや帳簿に向き合った。

老眼の目には。
小さい字は苦痛この上ないが。

またリズムに乗ってきた頃。
電話がリンリンと鳴るではないか。

「はい、○○ですが」
「この度は経営者の方のセミナー案内を・・・」

経営者は不在だと申し上げ。
電話を切った後、舌打ちを鳴らした。

  ◇ ◇ ◇

帳簿の続きは進まず。
それでも仕上げようとすると。

「こんにちは!」
「何か御用ですか?」

「このお店の前に自販機を置きませんか?」
「経営者がいませんので分かりません!」

かなり苛々した調子で。
お断り申し上げた。

  ◇ ◇ ◇

本日ロトを購入すれば。
確率高いだろうなと思ったのは。

今だから。
書ける話しで。

トサカからは。
湯気が出ていたはずである。

  ◇ ◇ ◇

当たりの日だと思いつつも。
中途の仕残しは気持ち悪い。

時間を惜しんで。
またもや帳簿のチェックに入った。

  ◇ ◇ ◇

・・・ら。
またもや電話が鳴りだした。

「はい、○○ですが」
「初めまして、先物取引の・・・」

ちょいと前に。
米屋の大将から授かった知恵を使い。

「購読の申込みですか?」
「いえ、将来有利な・・・」
「申込みでなければ結構です」

相手が何か言ってる途中で。
電話を切らせてもらった。

  ◇ ◇ ◇

そうこうするうちに。
午後の外回り時間となってしまった。

カッカする気持ちを静めるために。
気分転換だと思うようにするも。

理屈は感情には敵わない。
カリカリしたまんまであった。

  ◇ ◇ ◇

それでも身体を動かしたからか。
ちと落ち着いてきた。

帰店後に再度。
帳簿チェックを始めたら。

「こんにちは!」
「どちら様ですか?」

すると。
一番最初にやって来た。

倒産寸前の店を売り込む。
詐欺商法に近いヤカラだった。

こんな連中はきっと。
新聞屋の拡張員に向いていると思うも。

「今ならお時間は・・・」
「これから歯医者だからダメ!」

もう殺意を含んだ返事で。
近くに鉈が無くて良かったと思った。

  ◇ ◇ ◇

結局、帳簿は仕残し。
歯医者では痛さと恐怖でクタクタだった。

こんな日は。
とっても珍しいのであるが。

滅多にないクルクル日に当たり。
振り回された日で終了した。