突き詰めると。

鮎釣りにハマっていた頃のお話し。
釣行日記を書いていた。

期日、場所、時間、天候、水温、川の様子。
竿の調子、鈎の大きさ、糸の太さ。

釣れた鮎の大きさに、活性反応まで。
グラム単位、ミリ単位あたりまで。

目に付いたこと。
人から聞いたこと。
自分の思うこと。

ありとあらゆる情報を片っ端から。
手書きで紙に書きまくった。

記録の集積が釣果につながる。
そう信じていたからこそなのだし。

大いに役立ったこともしばし。
面白くて仕方なかったのだが。

ある日突然。
そんな自身の姿に飽きてしまった。

シャカリキでガチガチだった。
そんな肩の力を抜きたくなった。

「糸を垂らすだけで満足やん
 誰と競争して釣りをしてるねん」

徹底的に突き詰めることが。
かなり好きな部類だけに。

ありとあらゆる経験値を。
記録に残そうとしたのだが。

とてもではないが。
疲れて降参してしまった。

また記録だけでは。
どうにもならない事象を多々経験し。

楽しむ心が無くなり。
シャカリキだけでは息苦しい。

だから自然体で構えることの。
何が悪いねんと思うようになった。

勝負する釣り師にとって。
これは敗北宣言なのだろうが。

そんなことはもう。
全然気にしなくなった。

このこと自体が。
丸~くなった証拠とばかり。

今は脂がすっかり抜けて。
竿を持つことにウキウキしてしまう。

こんな境地に立つには。
それ相応の時間と投資と熱意を経たからだろう。

それでも心意気は持っている。
【心はアマチュア、腕はプロ】

・・・
秋風よ心して吹け。