塗るなら無塩バター。

ベッカライ・ビオブロートさんへ。
顔を出した。

オーナーの本を読んでから。
氏のこだわりに興味を持ち。

パンを知りたくなってきた。
それからというもの。

迷惑をかえりみず知りたい事を。
オーナーにズバリお聞きしている。

この日もまさにそうで。
すぐに質問したのである。

「カレースープに相性の良いパンを。
 教えて下さいませんか?」

「私の好みで云うと。
 このパンとこのパン」

そんなやり取りをしていると。
オーナーからオファーがあった。

「これ食べてみませんか?
 食パンの余りで焼いたパンです」

初め躊躇したのだが。
食べたい誘惑に負けたので。

「美味しい食べ方を。
 是非、教えて下さい!」

すると即座に冷蔵庫を開け。
次の仕込みに使うバターを塗った。

「無塩バターを塗った。
 これを試して下さいよ」

何もかも初体験だったのだが。
ひとくち頬張ったら。

パンがやたらと甘く感じるので。
そのままの感想をお伝えした。

「パンがとっても甘く感じて。
 こんな美味しく思うのは初めてです」

オーナーも笑いながら。

「無塩バターの味を知ったら。
 もうやめられないんですよ」

買ったフォルブロウトパンに。
無塩バターを塗りたくなり。

近所のスーパーに行ったら。
そんちょそこらで売ってないのだった。

口の中が無塩バターを塗ったパン!
遠出をしてでも。

なんとか。
手に入れなければならない。

そんな使命感に燃えるほど。
食べたくなる逸品であった。

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