昔々の大昔。
浪人になって初めて。
電車通学というものを体験した。
小・中・高時代は。
全て歩きで通学出来る距離。
特に高校なんて歩いて数分。
それなのに。
自転車を使っていた。
初めは。
電車通学が嬉しくて仕方なかった。
数週間もすると慣れてきて。
ほとんど毎朝。
同じ時間の同じ車両に乗るようになった。
浪人生の緊張もほぐれた六月一三日。
午前七時三四分の電車で。
(ちょっとフィクション)
次の駅で乗り込んでくる女子高生に目が釘付けになった。
瞬間に。
ドカンと一目惚れ。
その衝撃たるや。
今の今まで経験がない。
あるんやねぇ。。。
翌朝からは迷わず。
同じ時間の電車で同じ車両の同じドア口。
毎日がドキドキワクワク。
その娘をひと目見ることに心血を注いでしまうようになった。
一緒に電車に乗っている時間は5分少々。
たった5分のあの娘。
もう真剣勝負みたいな気持ちであった。
だけどそれだけ。
そんなこんなが続いたんだけど。
ある日。
震える声で勇気を出して話しかけた。
「おはよう」
間抜けだよなぁ。。。
それでも。
ニッコリ顔で返事をもらった。
「おはようございます」
盆と正月とクリスマスと誕生日ともっともっと。
「こんな幸福があって良いのか!」
その日の晩は眠れなかった。
・・・んじゃないかな。
頭の中に。
受験生という自覚はスコンと消し飛んでしまった。
毎日。
朝の電車の時間が来ることに。
緊張と感謝と興奮がない交ぜになって。
クラクラした。
それなのに。
進歩も話題もない私は。
会って交わす言葉は。
「おはよう」
だけであった。
◆
気が向いたら。
また次回に。
続きを書きます。