それでも、期待したい。

5日前。
京都の名門私立大学、○命館大学の学生から。
店に電話があった。

「同大学生と同院生との共同プログラムで。
 学生の視線から貴方の業種のキャンペーンをしたい。
 ついては、店側から協力してもらえないか?」

どんな仕事でもそうだと思うが。
同じ事の繰り返しが続くと。
閉塞感やらマンネリ感やらが出てくる。

打開したい気持ちと。
現状維持を継続したい気持ちとが。
鬩(せめ)ぎ合いながらも。
ズルズル日々を過ごす御仁が。
私の年齢となると多数を占めるのではないかと。
余計な想像をするのだけど。
どうなんだろうか?

   ◇

新鮮な意見や考え方も吸収したいと思ったので。
先週の土曜日。
夕方に面会の約束をした。

その時に。
学生さんにお願いした。

「手書きで結構なので、
 先に質問書をFAXして下さいますか?」

先に質問をもらった方が。
お会いしたときにキチンと応えられると思ったからだ。

   ◇

金曜日にFAXが届いた。
ちょっとでもワクワクするような質問があれば。
今の自分で知りうる内容を。
分かり易くご説明しようと思っていた。

・・・んだけど。
内容は以下のようなものだった。

   ◇

@今の問題点は何ですか?
@改善点や経営努力はしてますか?
@顧客の反応はどうですか?

   ◇

これらの質問書を読んで。
FAX書はゴミ箱に捨てた。

もちろん。
自分の知りうる内容も、分かり易く説明することも。
やめた。

   ◇

土曜日の夕方。
くだんのおぼこい顔の学生がやってきた。
簡単な挨拶をすませ。
先に概要を教えてほしいとお願いした。

「あ~だ、こ~だ」
「そうですか」
「質問してよろしいですか?」
「どうぞ」

   ◇

FAX通りの質問ばかりであった。

   ◇

一通りの質問が終わったので。
意地が悪いと知りつつも。

「こちらからも質問してよろしいか?」
「ええ、どうぞ」

   ◇

「あなたは新聞を下宿先で読んでますか?」
「いいえ、読んでません」
「・・・はい?」

「では、新聞はどこで読んでますか?」
「学校で読んでます」
「それってインターネットでしょ?」
「はい」
「それには新聞の情報が全て網羅されてないですよ」
「・・・」

「この業界のキャンペーンをするんですよね?」
「そうです」
「だったら。
 身銭を切ってでも新聞を購読するとか。
 1ヶ月の値段が学生の貴方にとってどうなのかとか。
 どんな記事が掲載されているのかとか。
 それらが貴方達に必要なのかどうかとか。
 失礼だけど、そういう視線をお持ちなの?」
「いや、あんまり・・・」

「もう一歩、突っ込んでお訊きしたいんだけど。
 私は貴方からのFAX書を読んでますよ。
 質問にもお答えできるように考えてましたし。
 実際、お答えもしましたよね?」
「はい」
「この業種のキャンペーンをするのに。
 新聞は読んでいない。
 情報はインターネット。
 しかも。
 予習もしないでのぶっつけ本番です。
 訊けば答えてくれると思ってませんか?」
「・・・」
「情報はタダではないですよ。
 しかも。
 記者さんは記事を掲載するのに一言一句に呻吟してるんですよ。
 貴方に言っても理解できないと思いますけど」

   ◇

頭にきていたのである。

   ◇

「それくらいでキャンペーンをすると大口叩くなら。
 次のゼミで私の話したことを議題にのせて下さいな。
 教授始め学生からも。
 言い分があるなら私が受けて立ちますから。
 そうでないと。
 教授や貴方達は恥と知らず。
 恥だけしかお持ち帰り出来ないよ」
「・・・」

「一週間分の新聞をお渡しするから。
 全ページを子細なく読んでごらん。
 私は毎日そうしてるし。
 且つ他紙も目を通してるんだよ。
 それでもって、
 何か打開案やら提案がないかと思案してるんだわ」
「・・・」
「もし、ご縁があればまた連絡してきてちょうだい。
 貴方にちょっとでも改善を感じたならお答えするから。
 本日はこれでお終い」
「ありがとうございました」

   ◇

もう訪ねて来ないかも知れないが。

また、もし来たら。
もっとお教えしたいと思っている。

新しい世代の目線は。
どうしても期待してしまうんです。