旅の醍醐味。

昨日の両親の旅行話を聞いた。

「旅館では仲居さんがお前の友人の奥さんの話をしてたぞ」
「去年、聞いたと思うで」
棟方志功の作品もいっぱいあったぞ」
何でも鑑定団で放映されてたからな」

どうも旅館で拝聴したらしい。

   ◇

話しは続く。

「お湯はヌルッとしていて気持ち良かったぞ」
「そんなん当たり前やがな」
「贅沢な部屋やったぞ」
「良かったがな」

   ◇

どうやら天候不順の白羽が立ったようで。
どしゃ降り雨に。
ピカピカドンドンの雷。
雪に霰(あられ)に雹(ひょう)。

おそらく。
緊張の連続だったんだろうと思いつつも。
同情なんてしない。

   ◇

「貴重な体験したがな」
「翌日に浜坂に行ったんや」
「ふぅ~ん」
「道行く人に市場の場所を聴いたんやけどな」
「何かあったん?」
「漁師の人やってな。車に乗り込んで市場を案内してもろたんや」
「そうなん?」
「それも昼から一杯引っ掛けてたんや」
「ほんで」
「セコ蟹の活きのエエのを見つくろってもろたんや」
「よかったがな」
「しかもな、ビックリ価格やってん」

   ◇

セコ蟹を六パイ買ってきてたんだけど。
まま、価格は仕方ないと思っていた。

   ◇

「なんぼやったと思う?」
「知らんけど、そこそこと違ゃうの?」
「一杯200円だったのをまけてもろた」
「・・・エッ?」
「しかも、その漁師さんが選んでくれたんや」
「どんなふうに?」

   ◇

「オレの言うてる事がウソやと思われたくないからと言うてな」
「ほぉ」
「次の店で値段を交渉してくれたんや」
「ふぅ~ん」
「持ち重りのする蟹ばかり選んで、確認させてくれるんや」
「良かったがな」
「だから、こうして美味しいセコ蟹が食べられるんやぞ」
「ごちそうさま」

   ◇

「えらい旅行やったけど楽しいもんやな」
「企画は私がしたんやで。当たり前やがな」
「友人の奥さんにお礼言うといてな」
「その前に私と違ゃうの?」
「友人の奥さんと旅館にや」
「はいはい」

   ◇

思うに。
思う存分、醍醐味を味わったようである。

よいよい。

   ◇

「友人」欄、更新。

「旅行」欄、苦しく更新。