口惜しい。

数日前のお話になる。
仕事がてら重鎮がお越しになった。

わざわざ拙宅に顔をお出しになり。
故人に手を合わせていただいた。

仕事を終えて帰宅すると。
その足で二人尼崎に向かった。

ご友人家族と合流して食事である。
先に重鎮と飲み始めた。

あれこれ話していると時間もすぐ経つ。
するとご友人家族も次々に合流した。

この重鎮は十ほど上であらせられるのだが。
いつもお寒い親父ギャグを連呼される。

どう贔屓目に見ても。
関西の笑いの質には堪えられないので。

「ええかげんに、おやめなさい!」

くどくどご注進申し上げるのだが。
まったくお聞きにならない。

それどころかヒートアップされる。
愛想笑いもせずに聞き流すのだが。

あっちからこっちからと。
ネタの違う親父ギャグを連呼していると。

ネタの豊富さにちと聞き入ってしまう。
悪魔の瞬間が訪れることになる。

不覚にも。
プッと吹いてしまうのである。

重鎮はそこを見逃さない。
それこそが重鎮の目論見なのである。

「ほら、笑ったじゃないの!」

その手には乗らないと。
何度も注意していたにもかかわらず。

今回もまんまとしてやられた。
年の功なのだろうが。

誠に口惜しい。

 ◇ ◇ ◇

その重鎮に母より遺言が。
まだ亡くなってないけど。

「死ぬ前に何度でも。
 美味しい山菜を食べたいわ」

こうも話しておりました。

「そう言えば。
 今年は雪笹も食べたいわね」

重鎮。
宜しくお願い申し上げます。

ペコリ。