その昔、友人の紹介で。
刀鍛冶のこしらえた。
刀剣のような庖丁を入手した。
それを我が家の料理職人である。
母親にプレゼントした。
一挙に二本の大盤振る舞い。
それでも。
長く使うとさすがに刃がぬるくなり。
スパスパ切れなくなった。
母親は近所の研ぎに出したのだが。
その研ぎの方法が。
どうにも庖丁には相性が良くなかった。
そんなこんなで困った時期に。
庖丁を製作した職人さんにご相談申し上げると。
頼もしい言葉をいただいた。
「庖丁の面倒は見ますから。
切れなくなったら送って下さい」
もう何度目か。
過酷に使った庖丁を。
呵責を感じながらもお送りした。
数日後の本日。
丁寧に研がれたいぶし銀の庖丁が。
手元に届いた。
良いモノは面倒を見なければならない。
自分で出来なければ。
依頼するしかないのである。
庖丁の癖は。
使用者と製作者がご存じのはず。
そう思うのである。
長いお付き合いを望むのならば。
製作者にメンテナンスを依頼するのは。
最も理想的だと言える。
これら二本の庖丁は今後。
どんな道を歩むのだろうか。
実は私も楽しみである。