夏が来れば思い出す。

故オトンは。
鮎釣りがとても好きだった。

釣りはしていても。
全く鮎釣りには興味がなかった私。

それでも。
契機を手にしたのだと思う。

プー太郎という転機が訪れ。
その時に物は試しと鮎釣りを始めた。

嫌々頭を下げて。
故人に釣り指南を乞うも。

ご自身が楽しむだけで。
こちらはただ見ているだけ。

あまりに口惜しいので。
当時のあらゆる情報をかき集め。

朝の仕事と午後の仕事の間に。
揖保川までせっせと通った。

釣れても戸惑うばかりで。
何度も何度もヘマをしでかし。

目の前で釣った鮎を逃すなど。
数え切れないほどだった。

ハマると研究熱心になるので。
相応の身銭を切って投資を始めた。

するとどうだろう。
ある程度上手くなったのである。

それからは故人と。
ガチの競争をしだすようになった。

今となっては。
これが面白かった。

釣れた、釣れない。
鈎がどうだ、糸がこうだ。

お互いに負けじと。
切磋琢磨したのだと思う。

手先が器用だった故人に。
遠慮なく仕掛けを作ってもらい。

その釣果を報告しながら。
新しい仕掛けをリクエストした。

二人で一緒に鮎釣りに行くことは。
ほとんど叶わなかったが。

代わりに釣り好きの友人達が。
故人の面倒を見てくれた。

「釣り」欄、更新。

ありがたいものであると。
この季節になると思い出す。