この時期に思い出す。

学生時代。
標高1500mあたりの温泉宿でバイトをしていた。

何年もお世話になったその宿は。
硫黄温泉で混ぜもの無しだった。

今思えば贅沢この上ないのだが。
始めは湯あたりで肌がカサカサになった。

温泉に慣れると快適そのもので。
仕事後のひとっ風呂はカンフル剤だった。

ただ帰宅したときには。
衣類が火薬臭になっていた。

夏のバイトは9月中旬まで続いたので。
帰宅しても蒸し暑い夏は通り過ぎていた。

だからか。
学生時代は夏バテ知らずだった。

バイト先で超アスリートだったH氏は。
毎年夏の後半にあるお誘いを受けていた。

「明日日帰りで山に行かない?
 西穂、奥穂、前穂を走破しようよ」

もう四半世紀前の話しである。

当時の私はH氏の頭を疑っていたので。
丁重にお断りし続けていたのだが。

だまされたと思い練習して走っとけば。
面白い思い出となっていたと思う。

H氏は真夜中に出発し。
夕方には走り終えて帰ってきていた。

宿の温泉で汗を流し。
楽しそうに山の走りを語っていた。

来月には紅葉が始まる乗鞍。
チャンスを作って行きたいものである。

今は開催場所を東京にしているロッジ会だが。
近い将来には乗鞍での開催も視野に入れたい。

硫黄の臭いがプンプンする温泉で汗を流し。
乾いた喉をビールで潤す。

故支配人の暴君ぶりを酒の肴に。
故人達の思い出話しで盛り上がる。

何度聞いても聞き飽きない話しを。
乗鞍の地でまた聞きたくなった。